Heard melodies are sweet,
but those unheard are sweeter.
(John Keats)
 

耳に聞こえるメロディは美しい。
しかし聞こえないメロディはもっと美しい。
(キーツ)

la-paume

音と詩によるLIVE LAB

形に残らない、見えないものに丁寧に向き合い内側から響きだす音と言葉の実験的アートラボラトリー

Tistou with a soft wind

ティトと風

繊細で純粋な響きと、時空間を越えて行く言葉の交差から、目に見えない世界が立ち上がる。消えて行く音の先にある無音界を訪れるとき、自分が溶けて行き、未知の何かに出会う束の間の旅を共有するユニット。

Activity Ex

詩活動ライブ例

掌に
握る私を          
波に放とう         
 

何も持たずに         
生まれた日
波のような
喜びに
泣いた力  
思い出せるよう
             
 
掌に
握る私を
風に放とう
                      
          
何も持たずに
生まれた日
風のような
喜びに
笑った訳を
思い出せるよう     
 

掌に
吹く風を見るなら
涙も乾く
 

掌に
溢れる波を抱くなら
涙も笑う
 
 
 

小さいヨハンナ記憶がない
ヨハンナのリンゴ
いつでも最初のリンゴ
 
小さいヨハンナ芝生の上で
姉さん剥いたリンゴを食べた
あんまり美味しい味なので
ヨハンナ芝生を転がって
ぐるぐるぐるぐる
目が回り
姉さんいなくなっていた
 

大きいヨハンナ記憶がない
ヨハンナのリンゴ
いつでも最初のリンゴ
 
100歳のヨハンナ芝生の上で
小さな子どもにリンゴを剥いた
あんまり赤い皮なので
ヨハンナ芝生を転がって
ぐるぐるぐるぐる
皮を剥き
まちじゅうみんなにりんごをあげた
 

ヨハンナのリンゴ
いつでも最初のリンゴ
赤くて甘い最初のリンゴ
赤くて甘い最初のリンゴ
ヨハンナのリンゴ
ヨハンナのリンゴ
 
 
 

Tistou

ティト

ポエトリーリーディング 
TOMOKO

東京都出身。13歳よりエミリ・ディキンスンの翻訳家中島完氏と今日まで詩文通を続ける。
テキスタイルデザイン、コンセプトデザイナーを経て2010年より、詩作を中心とした活動に入る。詩、声、身体、スピリット、音、空間、の多層的感覚を意識した表現活動を続ける。出雲大社、天河大弁財天社にて、詩とパフォーマンスを奉納する。
2015年「les poésies de menuメニューの詩」がbccksの電子書籍ランキング1位。「春spring poems」「神の足音」「ビッグフットの森」他出版。朗読動画(youtube)「Invisible Sea 見えない海」他

私は
一歩づつ
一歩づつ
生きているのか
 
一歩づつ
一歩づつ
死んでいるのか
 
私は
一歩づつ
一歩づつ
ざぶざぶと波を抱え
さらさらと流れを渡り
ざーざーと雨に濡れ
しんしんと雪をまとい
はらはらと散る花になり
 
 
一歩づつ
一歩づつ
 
大切なひとが死ぬ時を
恐れないために
全身の耳を澄まして
精霊の声を聞いている
 
一歩づつ
一歩づつ
精霊に混ざり合えるよう
祈り
 
一歩づつ
一歩づつ 
新しいあなたに
会いに行くのだろう
 
 
 

目を開けると
いつも
世界が置いてある
 
鳩が運ぶ
小枝のように
世界が置いてある
 
しおれたヒナゲシ
戦争と
パン
 
私の中に
知らない世界が
置いてある
 
それは外の事なのか
内の事なのか
 
戦っているのは
世界なのか
私なのか
 
私の中に
風が吹き過ぎていく
兵士が書いた
砂の手紙を
最後に読んだ
風が
 
悲しんでいるのは
世界なのか
私なのか
 
起きていることは
世界なのか
私なのか
 
繰り返される出来事を
見ているのは
世界なのか
私なのか
 
人が去り
雨が泣く地面を踏み
実ったリンゴの木を
抱くために
私は
出かけよう
 
外の事だろうと
内の事だろうと
 
繰り返しの輪の外へ
世界を連れて
私は出かけよう
 
錆びた長い
フェンスのように
抵抗する自分の外へ
辿り着いたら
 
闇が光に溶ける空の中から
鳩を捕まえ
手紙を託そう
 
どんな時も
人の心から
愛が消えた事は
なかったと
 
記した手紙を
結わえて
鳩を飛ばそう
 
 
 

a soft wind

響きもの 
水晶楽器、音叉、コングの振動を通して、記憶の先を辿り、未来を開く。

ビックフットは
 
夜の空
 
ひとり星座を編んでいる
 
寂しい子どもをみつけると
 
星の毛布を投げるだろう
 
毛布をもらった子どもは
 
空の旅
 
両手に
 
笑いを溢れさせ
 
宙返り
 
ビックフットは
 
森の中
 
ひとり神話を書いている
 
迷った大人をみつけると
 
星の毛布を投げるだろう
 
毛布をもらった大人は
 
森の旅
 
両手に
 
涙溢れさせ
 
宙返り
 
- - - - - -
 
ビックフットは
 
見えません
 
大きすぎて
 
見えません
 
呼んでいるの
 
ビックフット
 
呼んでいるの
 
ビックフット
 
必ず答えてくれる
 
ビックフット
 
どこにいたって
 
星の毛布が届くから
 
 
 

深い山の奥に
小さな竜が
眠っていた
山の霧に包まれて
スヤスヤと
眠っていた
太陽が土を温めると
霧はさらに濃く
ゆらゆらと
木々の間を漂って
眠った竜を通り過ぎ
高い空へ昇っていった
 
 
 
薄眼を開けて
空を見上げた小さい竜は
山をいくつもまたぐほど
大きな白い
竜を見た
なんて大きくて強そうな竜なんだ
見とれる間もなく
大きな竜は尾を翻し
風の速さで
山の向こうへ
飛んでいった
 
 
 
僕もあんな風になりたいな
そう言って
小さい竜は跳ね起きて
ねぐらの穴を飛び出した
追いかける声には耳を貸さず
できる限りの速さで走った
山の頂まで来ると叫んだ
 
 
 
「空の竜
みてください
僕はこんなに早く走れます
あなたと一緒に連れて行ってください
あなたのように大きくなりたいのです
きっと役に立つでしょう」
 
 
 
その声が聞こえたのか
聞こえなかったか
大きな竜は再び
近くの空へ現れた
 
 
 
「来たければ
私の背中に乗りなさいい」
そう言って大きな竜は
空を降りてきた
 
 
 
小さい竜は
目を輝かせ
一目散に大きい竜に飛び乗った
 
 
 
小さい竜を背中に乗せて
大きい竜は広い空に
上がって
上がって
上がって
あっという間に
山は遠く小さな点になった
 
 
 
小さい竜は
あたりの空が
濃い青に変わったことに
気づき
少し怖くなってきた
大きい竜の背中を掴む手に
力が入る
 
大きい竜は
おかまいなしに
どんどん高く
どんどん早く
自在に駆け回った
 
もう
山などはるか彼方に消えていた
代わりに
たくさんの星が
あたりを埋め尽くしていた
飛び交う星をすり抜け進む
 
大きい竜は
見事な飛行術
 
小さい竜は
背中につかまり
胸がドキドキしながらも
嬉しくて
嬉しくて
いつまでも
この旅が終わらないことを
願っていた
 
大きい竜は
ひときわ明るい星を過ぎると
ふわりと雲に覆われた青い星に向けて
飛び込んでいった
 
「うわーぶつかる」
小さい竜は大きい竜の背中につかまり
目を閉じた
気がつくと
小さい竜は
深い山
見慣れた景色の地面にいた
そっとあたりを見ると
柔らかな朝の霧が
体を包んでいた
 
空には
山をいくつもまたぐほど
大きく白い筋雲ひとつ
眠そうに
浮かんでいた
 
 
 

誰かが
それを
呼んだ
 
そら
 
誰かが
それを
見つけた
 
見えないような
見えるような
広がるような
包むような
じっとしているような
うごいているような
さわれないような
さわれるような
とおいような
ちかいような
 
日が降る中で目を閉じて
月降る中で目を閉じて
みえないそれをみようとした
なにかが触れて過ぎていった
どこまでもどこまでもつづく
みえないそれをみようとした
どこまでもどこまでもちかく
ここによりそっていてくれた
いつもくっついていてくれた
はなれることはできなかった
 
 
 

私の足が柔らかな枯れ葉の海を踏む、その前に
私の花が生まれていた
紅色野薔薇
 
私の手が空を結ぶ樫の木に触れる、その前に
私の花が生まれていた
白雪野百合
 
私の羽がコマドリの声を追いかける、その前に
私の花が生まれていた
甘い忍冬
 
私の足が星の苔をなぞる、その前に
私の花が生まれていた
蜜降る針槐
 
私の髪が時計草の時に絡まる、その前に
私の花が生まれていた
時を打つ一輪草
 
私の背中を帚星が撫ぜる、その前に
私の花が生まれていた
変わらぬ誠ニオイアラセイトウ
 
私の頭に載せたシロツメクサの輪の、その中に
無限の宇宙を開き
空の畔で
魂の花を探すと誓い
向う未知
 
茉莉花、アヤメ、山藤、桜、
先々に誘う花畑回り道
歩けど進まず
戻る道は星と消え去り
荒れ野に佇めば
果てなく深い蒼の帷に震える
小夜啼き鳥
 
ひとり泣き濡れる茜野原
合歓の木の下に眠り
小舟漕ぎ出す夢見る頃
瞼に降る花の呼び声を聞く
 
目を開けてお前の手の中を見よ
昼より白く
夜より黒く
光る花
こよなき夢よ
永劫の花
お前の花よ
 
 
 

 
こんなにきれいな 空の下
見上げる
私は
何も持ってはいないけど
 
きれいのたねなら
たくさん
知っている
 
それは
見知らぬ誰かが撒いた
無数の
尊い祈りのたね
 
畑の
オミナエシの中に
紛れていやしないか
 
お母さんの作った料理の中に
隠れていやしないか
 
工場のなかで
眠っていやしないか
 
お父さんの足跡に
忘れられていやしないか
 
誰にも知られずに
そっと蒔かれて
黙っている
たね
 
中には
大事な人が
大事なものが
幸せであるように
祈る願いが
詰まっていて
時期が来ると
ちゃんと役目を
果たすだろう
 
私はそんなたねを見つけて
知らせよう
 
こんなにきれいな空の下
見上げる
私の手には何にもないけど
 
私も
たゆまず
たねを蒔こう
幸願う祷りのたねを
いつか役立つ
小さなたねを
たくさんたくさん
世界を美しくするために
 
たねは
そこら中に
広がって
誰かの心の隅に仕舞われて
じっと
役目を果たすだろう
ほら
風に乗って飛んでいけ
どこまでも
どこまでも
あなたの澄んだ瞳の中を
通り越し
空の青さを突き抜けて
暗い宇宙の彼方まで
これから生まれるすべての彼方まで
飛んでいけ
そして世界の欠片となって
新しい美しさの
たねとなれ